耐える力 逃げる力
医学書院 「精神看護の基礎」という精神の教科書を読んでいたら
中井久夫先生による精神健康の基準というのが載っていました。
精神健康の基準とは、つまり
「精神の健康を危うくするようなことに耐えられる力」
のことをさすそうです。
おもしろそうだったので、すこしあげてみたいと思います。
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・たくさんの自分がいて当たり前と思える能力
⇔うまく自分を使い分けできない。そうしてしまう自分が許せない。
・世の中の矛盾(両義性)があって当たり前と思える能力
⇔自分や人の失敗や矛盾が許せない
・二重拘束(裏腹なふたつのメッセージ)のある世の中と折り合いをつけ、
自分らしくいられる能力。
⇔グレーゾーンがなく、どちらか極端な価値観でとらえてしまう。
・一時的に赤ちゃん返り(退行)ができる能力
⇔休息や甘えを許されず、不眠不休で燃え尽きてしまう
・トラブルを「たまたま起こったこと」と、その問題だけに限局してとらえられる能力
⇔「だから私はダメなんだ」と拡大解釈して自己否定しまう
・即座に解決を求めない、未解決のままでいられる
持ちこたえて待っていられる能力
⇔すぐに答えを求め、待てない。おせっかいに手を出してしまう。
・いやなことに耐え、いやなことがある程度引き受けられる能力
⇔これができないと、看護師は続かないのだとか
・いやなことはいやと感じられる能力。あとまわしにできる能力。
・一人でいられる能力
・二人でいられる能力…二人(あるいはそれ以上)でいても自分らしくいられる能力
・秘密を話さないでいられる能力。嘘をつける能力
・「ま、いいか」と思える能力=いいかげんで手を打つ能力、意地にならない能力、
しなければならないという気持ちに対抗できる能力、
いろいろな角度からものを見る能力。
・あの手この手を考えられる能力=複数の対処方法を持ち合わせられる
⇔対処方法を使いきって、窮地に陥る。
・疲れを感じられる能力=身体感覚(身体の内と外に起こる変化)を感じ取る能力
⇔余裕なく目いっぱい働いてしまう
・対人関係を読む能力=空気、予感、余韻などを感受できる能力
・妄想(空想)できる能力、独り言できる能力
これらがだいたい円滑なとき、
人は、自分が周囲と無理なく調和して存在し、
「これでいいのだ」と自分を肯定的に感じられるのだそうです。
これは、個人の課題ももちろんあると思うのですが、
同時に、個人を受け入れる環境の課題もあると思います。
職場が働きやすいかどうかは、自分の問題でもあり職場の問題でもある。
気がつくとぶつぶつ独り言をつぶやいているのは、
決して歳のせいだけではなかったのですね(笑)